大きな穴。

歯が痛い。
原因はわかっている。そう、虫歯。
右下、左下ともに大きな穴が空いている。
そのほか軽度〜重度の虫歯がそこかしこに点在する。
歯医者さんにひどくなる前に行っていれば・・・などという
レベルではない。その段階は超えている。
もう半ば諦めムードが漂って来たここ最近だった。
それにしてもずきずき痛む。極端な温度差のものを
口に入れると激痛が走る。
自己管理の出来なさっぷりは、今さら始まったことではないけれど
不甲斐なさ、体たらくぶりには、ほとほと嫌気がさす。
こともあろうに、職場の真上は歯科医院。
常に視界に入り、行こうと思えば何時でも行けると
思うとタイミングを見失う。
はぁ。学習しないな。


1度の失敗ならばむしろ、しないよりした方がいい場合のほうが多い。
問題は失敗の後だ。学習するかしないか。失敗を生かせるかどうか。
作者は全く生かせていない。つまり、学習能力がないということだ。
のど元過ぎれば・・・すっかり忘れる。
その時は心がけようと密かな誓いをたてるほどなのに、
忘れる。薄れ行く記憶たち。
心がけも誓いの効力も弱って薄くなる。
痛みも具体的には思い出さなくなる。
あんなにも強く、激しく思ったのに。
そう、ゆるやかな忘却。


人が他の動物より長けていることは「忘れる」ことだけらしい。
寿命が長い人類はそれだけ、嫌なことや恐ろしいこと、
覚えていると生活に支障があることが積み重なる。
発達した脳を持つ人類はそれだけ、
積み重なった記憶が感情や情動と密接に関わる。
だから、きっと「忘れる」ことは、
円滑に生きていく術なのかもしれない。
できる限り、「忘れる能力」を使わないで済む人生がいい。
そうはいっても、人は必ず、痛いに目う。そして誰かに傷つけられる。
それでも、大丈夫。
また心機一転やり直せるし、いずれ新しい恋もする。
子供を生む痛みも「忘れる」から、兄弟姉妹が存在するわけだ。
そう考えると、子孫繁栄を基準に進化した故の「忘れる」能力は
仕方なのないことなのかもしれない。
しかし、人の能力は「忘れる」ことだけではない。
「理性」や「向上心」を持ち合わせ、
「自己顕示欲」も「自尊心」も備わっているはずだ。
だから、学習せねばならない。過ちから学ばなければならないのだ。
そんなことはわかっている。わかっているけれど、できたためしがない。
あぁ・・もしやこれは本能レベルの話じゃないな。性格の問題か。